TAIJIは、X JAPANのベーシストとして1986年から1992年まで活動し、特に1992年の日本武道館公演でのベースソロは彼のキャリアのハイライトの一つです。このソロは、テクニカルなタッピング、スラップ、ピック弾きを駆使したダイナミックなプレイで観客を圧倒しました。彼のソロは、単に技術を誇示するものではなく、ベースを「歌う楽器」として再定義し、感情と物語性を表現するものでした。TAIJIの音楽的ルーツは、幼少期から親しんだロックやヘヴィメタル、そして後にアメリカで触れた音楽シーンに由来します。彼はもともとギタリストとしてキャリアをスタートさせたため、ベースにギター的なアプローチを持ち込み、旋律的で派手なプレイスタイルを確立しました。さらに、彼のアメリカでの経験(特に『Jealousy』のレコーディング期間)は、洋楽ロックやファンクの影響を取り入れる契機となり、武道館でのソロに多様な音楽的要素が反映されています。以下では、TAIJIの武道館でのベースソロに影響を与えたと考えられるアーティストや楽曲をさらに深く掘り下げ、彼のスタイルとの関連性を具体的に分析します。
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影響を受けたアーティストと楽曲
- ビリー・シーン(Mr. Big, Talas) – “Addicted to That Rush” および “Shy Boy” ビリー・シーンは、TAIJIが公言していた影響源の一人であり、1980年代後半から1990年代初頭のテクニカルなベースプレイヤーの代表格です。「Addicted to That Rush」(Mr. Big, 1989)は、高速タッピングとスラップを融合させたビリーのシグネチャースタイルが際立つ楽曲で、TAIJIの武道館ソロにおける流れるようなタッピングフレーズやリズミカルなアプローチに通じるものがあります。また、ビリーのTalas時代の「Shy Boy」(David Lee Rothバンドでもカバー)は、グルーヴとテクニックが共存するプレイが特徴で、TAIJIが武道館で披露したリズムとメロディのバランスに影響を与えた可能性があります。TAIJIはビリーのテクニックを参考にしつつ、X JAPANのドラマチックな楽曲構成に合わせて、よりエモーショナルで劇的なフレーズを織り交ぜました。
- ジャコ・パストリアス(Weather Report) – “Portrait of Tracy” および “Teen Town” ジャコ・パストリアスは、ベースを旋律楽器として革新したジャズ・フュージョン界の巨匠です。「Portrait of Tracy」(1976)は、ハーモニクスを駆使した繊細で詩的なベースソロが特徴で、TAIJIの「歌うベース」という哲学に大きな影響を与えたと考えられます。武道館でのソロでは、ハーモニクスやスムーズなフレージングが随所に登場し、ジャコの影響が感じられます。一方、「Teen Town」(1977)は、複雑なリズムと高速なフレーズが特徴で、TAIJIのテクニカルな側面にインスピレーションを与えた可能性があります。TAIJIはジャコのジャズ的アプローチをヴィジュアル系やヘヴィメタルの文脈に変換し、武道館のステージで独自の表現として昇華しました。
- スティーヴ・ハリス(Iron Maiden) – “The Trooper” および “Phantom of the Opera” Iron Maidenのスティーヴ・ハリスは、ヘヴィメタルのベースプレイに疾走感とメロディを融合させたパイオニアです。「The Trooper」(1983)のギャロッピングリズムや、「Phantom of the Opera」(1980)の複雑なベースラインは、ベースがバンドの推進力を担いつつも独立したメロディラインを奏でるスタイルを示しています。。TAIJIは、スティーヴのエネルギッシュなアプローチをさらに派手で視覚的なパフォーマンスに昇華させ、ヴィジュアル系のステージングに適応させました。
- ダフ・マッケイガン(Guns N’ Roses) – “Sweet Child O’ Mine” および “Rocket Queen” TAIJIは、X JAPANのアルバム『Jealousy』(1991)のレコーディングでロサンゼルスに滞在した際、Guns N’ Rosesの音楽に触れる機会がありました。ダフ・マッケイガンのベースプレイは、シンプルながらもグルーヴ感とロックのダイナミズムを強調するもので、「Sweet Child O’ Mine」(1987)ではメロディを支える力強いベースラインが特徴です。また、「Rocket Queen」(1987)では、ファンキーなリズムとロックの融合が感じられ、TAIJIの武道館ソロにおけるグルーヴ重視のフレーズに影響を与えた可能性があります。TAIJIは、ダフのストレートなロックスタイルにヴィジュアル系の華やかさを加え、武道館のステージで独自の存在感を放ちました。
- クリス・スクワイア(Yes) – “Close to the Edge” プログレッシブ・ロックの巨匠Yesのベーシスト、クリス・スクワイアも、TAIJIのプレイに間接的な影響を与えた可能性があります。「Close to the Edge」(1972)は、複雑な楽曲構造の中でベースがメロディとリズムの両方を担うスタイルが特徴で、TAIJIの武道館ソロにおける多層的なフレーズ構成に通じるものがあります。クリスのプレイは、ベースを単なる伴奏楽器ではなく、楽曲の中心に据えるアプローチを示しており、TAIJIが「ベースで歌う」ことを追求する上で参考になったと考えられます。
- 高崎晃(Loudness)高崎晃は、TAIJIのベースソロに直接的かつ間接的に大きな影響を与えました。高崎晃のギタープレイは、テクニカルでありながら感情的で、情熱的でメロディアスなフレーズが特徴で、TAIJIがベースで「歌う」アプローチを追求する上で重要なインスピレーションを提供しました。武道館でのTAIJIのソロでは、高崎晃のギターソロのような流れるようなメロディラインや劇的な展開がベースで再現されており、TAIJIが武道館ソロで披露したタッピングやフレーズの構築に影響を与えたと考えられます。高崎晃の派手なステージパフォーマンスも、TAIJIがヴィジュアル系としての視覚的表現を強化するきっかけとなり、武道館でのソロに華やかさを加えました。
TAIJIの独自性と武道館ソロの特徴
TAIJIの武道館でのベースソロは、上述のアーティストたちの影響を受けつつ、彼の個性とX JAPANの音楽的文脈によって独自のものに仕上がっています。以下に、その特徴と独自性を具体的に分析します。
- ギター的アプローチの融合 TAIJIは元々ギタリストとして活動していたため、ベースにギター的なフレーズやアプローチを持ち込みました。武道館でのソロでは、両手タッピングやスライドを多用し、ギターソロのような派手なメロディラインをベースで再現。これは、ビリー・シーンのタッピングやクリス・スクワイアのメロディアスなプレイに影響を受けつつ、TAIJIがヴィジュアル系の視覚的パフォーマンスに合わせてアレンジした結果です。
- スラップとタッピングの融合 TAIJIのソロは、スラップとタッピングを織り交ぜたダイナミックなプレイが特徴です。ビリー・シーンの影響が強いスラップやタッピングに加え、ジャコ・パストリアスのハーモニクスや繊細なフレージングを取り入れることで、テクニカルでありながら感情的な表現を実現。武道館のステージでは、X JAPANのドラマチックな楽曲に合わせて、スラップの攻撃的なリズムとタッピングの流れるようなメロディが融合し、観客を引き込みました。
- ヴィジュアル系のパフォーマンス性 X JAPANのヴィジュアル系としての特徴である、視覚的な派手さと劇的なステージングも、TAIJIのソロに大きな影響を与えました。彼はベースを弾くだけでなく、ステージ上での動きや観客とのコミュニケーションを通じて、ソロを「ショー」として昇華。スティーヴ・ハリスやダフ・マッケイガンのエネルギッシュなプレイを参考にしつつ、ヴィジュアル系の華やかな美学を取り入れることで、武道館のソロは単なる演奏を超えたパフォーマンスとなりました。
- 感情表現と「歌うベース」 TAIJIはインタビューで「ベースはバンドの心臓であり、歌う楽器である」と語っており、武道館でのソロは彼のこの哲学を体現したものでした。ジャコ・パストリアスの「Portrait of Tracy」のように、ベースでメロディを歌わせるアプローチや、クリス・スクワイアのプログレッシブなフレーズを参考に、TAIJIは感情を込めたプレイを追求。武道館のソロでは、テクニックだけでなく、楽曲のドラマチックな展開やX JAPANの情熱的な世界観を表現し、観客の心を強く揺さぶりました。
武道館ソロの具体例と楽曲との関連
武道館でのTAIJIのベースソロがどのように影響を受けたかを具体的に見ていきます。
- 「高速タッピングやスラップを織り交ぜたフレーズは、ビリー・シーンの「Addicted to That Rush」のようなテクニカルなアプローチを彷彿とさせます。また、ジャコ・パストリアスのハーモニクスを思わせる繊細な音色が随所に登場し、楽曲の情感を高めました。このソロは、X JAPANのシンフォニックな要素とTAIJIのテクニカルなプレイが見事に融合した瞬間でした。
- スティーヴ・ハリスの「The Trooper」のようなギャロッピングリズムや、ダフ・マッケイガンのグルーヴ感あるプレイが影響を与えたと考えられ、ベースがバンド全体のエネルギーを牽引。武道館の広大なステージで、TAIJIのダイナミックな動きと派手なフレーズが観客を熱狂させました。
TAIJIの遺産と影響
TAIJIの武道館でのベースソロは、彼の音楽的ビジョンと影響を受けたアーティストたちのエッセンスが結実したものでした。彼は、ビリー・シーンの超絶技巧、ジャコ・パストリアスのメロディアスなアプローチ、スティーヴ・ハリスの疾走感、ダフ・マッケイガンのグルーヴ感、クリス・スクワイアのプログレッシブなスタイルを吸収し、ヴィジュアル系の枠組みの中で独自の表現に昇華しました。このソロは、単なる技術の展示ではなく、音楽を通じて感情や情熱を伝えるアートとしてのベースプレイを体現。TAIJIのプレイは、後のヴィジュアル系バンドや日本のベーシストたちに大きな影響を与え、ベースを主役級の楽器として再定義するきっかけとなりました。
結論
TAIJIの日本武道館でのベースソロは、ビリー・シーン、ジャコ・パストリアス、スティーヴ・ハリス、ダフ・マッケイガン、クリス・スクワイアといったアーティストたちの楽曲やスタイルから受けた影響を基盤に、彼のギタリストとしての経験とヴィジュアル系の美学を融合させた唯一無二のパフォーマンスでした。高速タッピング、スラップ、ハーモニクスを駆使したテクニカルなプレイは、X JAPANのドラマチックな楽曲と相まって、観客に強烈な印象を残しました。TAIJIのソロは、単なる演奏を超え、音楽を通じて心を揺さぶるアートとして、今日でも多くのファンに愛され続けています。
【XJAPANのX時代】ベーシストTAIJIの魅力① | hiro bro.